
親が親権を濫用して、子どもの虐待・放置・必要なものを与えないなどをした場合に、最長2年間の親権を停止することです。
この制度は、子どもを一時的に親から離して保護することが目的とされています。
1.親権停止とは?
親権停止とは、子どもを虐待から守るために作られた制度です。
従来では法律で”親権喪失”をおこなうことが難しく子どもを虐待から守ることができないために、2011年にもうけられた制度です。
この制度は、家庭裁判所が判断をして最長2年以下の審判をだします。
どんなときに親権停止になる?
親権を持つ親が、子どもの利益を害すること(児童虐待)をしたときに、親権停止制度がとられます。
主に報告されているのは、下記のようなケースです。
親権停止になるケース
- 子どもに対しての暴力・暴言(親自身・親の知人や恋人など)
- 子どもに必要な教育をさせない(幼稚園・保育所・学校に行かせない)
- 子どもに充分な生活を遅らせず、養育費を自分のために使う
- 子どもの世話をしない(育児放棄)
- 仕事をせず、無収入で子どもに充分な生活をさせられない

子どもに性的虐待をした場合は、“親権喪失”になる可能性が高くなります。
親権喪失では、親としての権利すべてを失います。
親権喪失とは?
親権を濫用して、親が子どもの利益を著しく害すること(児童虐待)をしたときに、親権喪失制度がとられます。
この制度は、親としての権利を永久に失うことになり、子どもへの面会もできません。
親権喪失になる可能性の高いケースは、下記のようなことです。
親権喪失になるケース
- 子どもに性的虐待をした
- 子どもに必要な医療行為を拒否する(手術が必要な病気なのに、手術・治療を受けさせない)
- 親の同居相手からの虐待・性的暴行(親が子どもを守らずに同居を継続している)
- 子ども自身が保護を求め、親が親権を放棄する意思がある
2.親権停止や親権喪失の手続きについて
子どもの住所地にある家庭裁判所に審判の申し立てをします。
この申し立ては、子ども本人の手続きも可能ですが、多くのケースでは親か成年の親族が申し立てています。
そして書類に不備などないように法定代理人が手続きをします。
申し立てに必要な書類は、下記の通りです。
親権停止や親権喪失申し立てに必要な物
- 親権停止・親権喪失申立書1通(裁判所にて入手できます)
- 対象となる未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 親権者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 親権停止・喪失を求める理由(虐待や育児放棄などの証拠)
- 収入印紙800円分(子1人に対し800円分が必要)
- 連絡用の切手800円程度(裁判所により変わります)
【関連ページ】親権停止審判・親権喪失審判について

親権停止・喪失が認められた場合、片方の親が親権を求める場合は裁判所に申し立てをします。
親権を求めない場合は“未成年後見人選定”の手続きが必要です。
未成年後見人とは?
未成年後見人とは、親にかわり法定代理人・監護権・財産管理を行う人のことです。
家庭裁判所の審判で親権を持つ親が、親権停止・喪失を認められたときに、未成年者後見人選任を行うことが必要なケースがあります。
残った親が行方不明・既に亡くなっているなどの場合は、家庭裁判所に未成年後見人選任の申し立てをおこなう必要があります。
親権を持たない親が健在なときは、親権者変更の手続きを行います。
未成年後見人になった例1
親権者(夫)が、子どもにきちんと食事をさせずに放置していたことがわかり親権喪失が認められた。
しかし、妻は亡くなっているため、子の祖母(妻側)が手続きをして未成年後見人となった。
未成年後見人になった例1
親権者(妻)が、育児放棄をして子どもの健康が著しく損なわれたので親権停止を認められた。
しかし、夫が行方不明で連絡がつかないため、叔母(父側)が手続きをして未成年後見人となった。
未成年後見人選任の手続き
未成年後見人選任の手続きは、子どもの住所地の家庭裁判所に申し立てをします。
【関連ページ】裁判所の管轄区域
必要なものは、下記の通りです。
未成年後見人選定申し立てに必要な物
- 未成年後見人申立書1通(裁判所で入手するか、裁判所のホームページにてダウンロードができます)
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 未成年者の住民票または戸籍附票
- 未成年者後見人候補者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 未成年者に対して親権を行うものがないことを証明できる書面(親権者の死亡が記載された戸籍(除籍・改製原戸籍)の謄本(全部事項証明書)や行方不明の事実を証明する書類など)
- 未成年の財産に関する資料(不動産登記事項証明証(未登記の場合は固定資産評価証明書)・預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳のコピー)など)
- 利害関係人からの申し立ての場合、利害関係を証明する資料
- 親族からの申し立ての場合は、戸籍謄本(全部事項証明書)
- 後見人候補者が法人の場合は、当該法人の商業登記簿謄本
今回のまとめ
親権停止とは、子どもを虐待から守るために期限付きで保護するための制度です。
児童虐待が酷い場合には親権喪失になり、子供に会うこともできなくなります。
親権者が子どもを虐待している証拠がある場合は、家庭裁判所に親権停止の申し立てをしましょう。

子供の虐待を見かけたら、厚生労働省で児童相談所全国共通ダイヤルを設けていますので報告してください。