
夫(妻)に借金がある理由だけでは、当事者の合意がない場合は離婚の請求ができません。
借金がきっかけで結婚生活の継続が困難になった場合は、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てます。
目次
1.借金は離婚の理由になる?
借金だけが理由の離婚請求は認められていません。
しかし、度重なる借金やギャンブルでできた借金(ギャンブル依存症)の場合は、離婚の理由になるケースがあります。
借金がきっかけの離婚の理由とは?
借金がきっかけの離婚の理由は、下記のようなケースです。
借金がきっかけで離婚するケース
- 借金の返済が困難になり、生活ができずに日々ケンカになり夫が暴力を振るようになった(DV被害)
- 借金の返済が終わっていないのに、夫(妻)がさらに借金を増やした
- 夫(妻)のギャンブルでの借金(ギャンブル依存症)
- 夫(妻)の借金が原因で、信頼関係がなくなり婚姻関係の継続が困難になり別居した
- 夫(妻)が収入を借金の返済にあてずに、ギャンブル・ブランド品に使う
- 夫が借金を返済せず、生活費も渡さない

さらに常識の範囲では考えられない行動は、”悪意の遺棄“の可能性があります。
悪意の遺棄とは?
“悪意の遺棄”とは、夫(妻)が結婚生活を維持するための努力・協力をしない・正当な理由もなく別居するなどの行為です。
下記のようなケースが、悪意の遺棄です
悪意の遺棄に該当するケース
- 生活費を渡さない
- 家事・育児の放棄
- 理由もなく家をでて戻らない
- 理由もなく実家に帰って戻らない
- 不貞行為(浮気)の相手と同棲して帰らない
- 生活費を渡す約束をして、単身赴任・別居したのに渡さない
- 理由もなく家を追い出す(追い出そうとする)
- 健康な夫が仕事をしない
- 共働きしている(同じ労働条件の場合)夫(妻)が家事を分担しない
2.借金の返済方法を考える
返済が難しい金額の借金の場合は、無理に返済を焦らずに最低限の生活を確保する努力をしましょう。
例えば、一時的に親戚(両親・兄弟など)に肩代わりしてもらい、無理のない金額の返済をしていく・複数の借金を1つにまとめる(債務整理)などで、月々の支払いが楽になります。
それでも、返済が難しい場合は自己破産の手続きも考慮します。

債務整理や自己破産をする場合は、弁護士に相談をしましょう。
現在では、インターネットで債務整理・自己破産を請負っている弁護士が簡単に検索できます。
実績のある弁護士に依頼してください。
3.借金返済が楽になっても離婚したい場合は?
夫の両親に借金の肩代わりをしてもらい生活は楽になっても、「もう夫を信用できない」と妻の離婚の意思が変わらないケースもあります。
この場合は、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚調停)の申し立てをします。
夫婦関係調整御調停(離婚調停)とは、家庭裁判所で裁判官・調停委員を交えた話し合いの場で、助言・提案をしてもらい問題を解決する調停です。
この調停のメリットは、当事者の間に調停委員が入り冷静な話し合いができ、裁判官から常識的場アドバイスがもらえることです。

夫婦関係調整調停(離婚調停)で話し合う内容は、離婚・慰謝料・養育費・子どもの親権・子どもとの面会交流などです。
夫婦関係調整調停(離婚調停)の手続き
夫婦関係調整調停の申し立て先は、相手の住所地にある家庭裁判者か当事者間の合意した家庭裁判所です。
【関連ページ】裁判所の管轄区域
財産分与請求調停の申し立てをしておくと、この調停内で一緒に進められるため同時に申し立ての手続きをお勧めします。
申し立てに必要なものは、下記の通りです。
離婚調停に必要な物
- 収入印紙1200円分
- 郵便切手800円程度(裁判所により違います)
- 夫婦関係調整調停申立書1通またはコピーで可(裁判所で入手可・裁判所のホームページからダウンロードできます)
- 財産分与請求調停申立書1通またはコピーで可(裁判所で入手可・裁判所のホームページからダウンロードできます)
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 資産・財産に関する書類(残高が分かる通帳のコピー・不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書)※財産分与請求調停に必要
- 陳述書(裁判官に調停前に、自分達の結婚から現在までの経緯・離婚原因・自分が望んでいることを読んでもらうためのものです)
※審理のために必要と判断された場合、追加書類の提出を求められることもあります。
【関連ページ】裁判所「夫婦関係調整調停」
陳述書は提出すべきか?
夫婦関係調整調停(離婚調停)の申し立て時に、”陳述書“を提出しましょう。
なぜなら、調停は1回2時間程度と短いため、事前に提出することで裁判官に口頭で事情を説明する時間を短縮できるからです。
よって、陳述書の提出をお勧めします。
陳述書に書く内容について
陳述書は、裁判官に「夫婦になってから現在までの経緯と、問題点・希望」を知ってもらうための書類です。
あまり長くなってしまうと要点が伝わり難くなってしまうため、注意しましょう。
なぜなら、裁判官に「この人は、何を望んでいるのか?」と伝わりにくいからです。
簡単に事実を説明する文章を心掛けてください。
陳述書に書く内容
- 夫婦の氏名・年齢・職業
- 子どもの名前・年齢・性別・現在一緒に暮らしている親
- 結婚してから現在までの簡単な説明(19XX年に結婚・2010年X月に長女が誕生・2014年X月に夫の借金が発覚・2015年X月から合意の上で別居など)
- 離婚の原因(夫が借金の返済に協力しない・浮気・性格の不一致など)
- 子どもの親権について(自分が親権を望むかどうか)
- 養育費・慰謝料の支払い方法・金額について(自分の希望額とその金額が必要な理由)

財産分与請求調停を一緒に申し立てる場合は、財産分与に対する希望も書いておきましょう。
今回のまとめ
夫(妻)の借金だけが理由の離婚請求はできません。
借金で生活が苦しい場合は、親類に頼ったり、弁護士に債務整理について相談してみましょう。
それでも、結婚生活の継続が困難な場合は、夫婦関係調整調停(離婚調停)の申し立てを行いましょう。

夫(妻)が借金をして返済する努力をしない場合、周囲に助けを借りても同じことをする可能性があります。
夫婦間で信頼関係が壊れてしまったときは、別居や離婚をして本人に責任の重大さを理解してもらいましょう。
そして、夫(妻)が復縁を望むなら借金の問題が片付いてから話し合いをしてください。