
夫婦で離婚に合意した場合、どんな理由であれ協議離婚ができます。
ただし、片方の「性格が合わない」という主張のみで離婚請求することは難しい状況です。他に理由になるものが無いか分析します。
両者の合意がない場合は、家庭裁判所に夫婦関係調整調停の申し立てをします。
目次
1.性格の不一致での離婚は難しい?
性格の不一致で離婚する場合、一方が離婚に合意しないケースは、解決まで長引く傾向があります。
なぜなら、性格の不一致は“悪意に遺棄”に該当せず“離婚調停”を申し立てても、「夫婦関係の回復が可能ではないか?」と裁判官からの意見が出る可能性があるからです。
悪意の遺棄とは?
悪意の遺棄とは、民法で定められた「夫婦は同居して、お互いに協力・扶助し合わなければならない」ことに違反する行為のことです。
悪意の遺棄にあたる行為
悪意の遺棄!
- 理由もなく生活費を渡さない
- 浮気相手と同居して家に帰らない
- 実家に帰り、家に戻らない
- 理由もなく勝手に別居している
- 理由もなく妻(夫)を家から追い出した(追い出そうとする)
- 生活費を送る約束で別居したのに、生活費を送らない
- 健康な夫が仕事をしない
- 単身赴任の夫が生活費を送らない
- 夫(妻)の暴力・暴言
- 家事・育児の放棄

性格の不一致は悪意の遺棄にあたりませんが、上記に当てはまる悪意の遺棄があった場合には離婚請求することが可能です。
悪意の遺棄以外に離婚が認められるケース
悪意の遺棄以外で離婚が認められるケース
- 夫(妻)の不貞行為(浮気・不倫)
- 夫(妻)の生死が3年以上不明である(行方不明になって3年以上)
- 夫(妻)が極度の精神病になり、回復が難しい(精神病であっても、治療すれば治る見込みがあるものは対象外)
- 婚姻の継続が困難な重大な事由がある

性格の不一致は、“婚姻の継続が困難な重大な事由がある”に当てはまるか当てはまらないか・・微妙なところなのです。
2.性格の不一致で離婚をするためには婚姻の継続が難しいと認められる必要がある
性格の不一致で離婚する場合、「婚姻の継続が困難である」と認められることが必要です。
夫婦間で、離婚の合意ができた場合は証拠を提示する必要はありません。
しかし、合意が無い場合でどうしても離婚したい場合は、“夫婦関係調整調停(調停離婚)”をします。
子の調停では家庭裁判所に証拠として提出を求められることがあります。
夫婦関係調整調停(離婚調停)とは?
夫婦関係調整調停とは、家庭裁判所にて裁判官・調停委員が夫婦の問題となっていることについて事情を説明し助言をもらい解決するための調停です。(この調停で、離婚をやめて夫婦関係の改善を目指すケースの報告もあります)
この調停のメリットは、当事者間で感情的になってしまう離婚・復縁向けた話し合いが難しい場合、冷静で法律の知識を持つ裁判官・調停委員が入ることでスムーズに進むことです。

この調停で離婚を望む場合、性格の不一致の証拠となるものを提出することで、離婚できる可能性が高くなります。
性格の不一致の証拠とは?
夫婦関係調整調停を申し立てる場合、性格の不一致の証拠を集める必要があります。
性格の不一致の証拠となるものは、下記の通りです。
性格の不一致の証拠
- 夫婦ケンカを録音・録画したもの
- 同居時からつけていた日記
- メールや手紙の内容(メールは写真をとってプリントアウトしたもの)
- 別居期間が1~5年間(婚姻期間の長さによります)
当事者間の話し合いで離婚が難しい場合は、別居する必要があります。
なぜなら、夫婦関係調整調停を申し立てるときに、別居していることが”婚姻生活の継続が困難”である証拠となるからです。
よって、別居期間が1年以上になってから調停離婚の手続きをすることが重要になります。
モラスハラスメントではないか確認してみる
モラスハラスメントは、証拠を残すことが難しいために”性格の不一致”として見られることがあります。
普段から、夫からの暴言が酷い場合は録音・録画をして第三者に聞いてもらいましょう。
下記のような言動がある場合は、モラスハラスメントの可能性があります。
モラルハラスメントに当てはまってませんか?
- 「子どもは渡さない、お前だけ出て行け!」
- 「俺が稼いだ金なんだら、俺が自由に使ってあたりまえだ。自分の食べる分は自分で稼げ!」
- 「顔も見たくないから出ていけ、出て行かないなら殴ってやる」
- 「お前は満足に何にもできないんだな、生きていてもしょうがないだろう」

ちょっとした失敗(お皿を割った・DVDの録画を忘れたなど)に目くじらをたてたときに酷い暴言を吐くなども、モラスハラスメントです。
この場合も夫婦関係調整調停に提出する証拠が必要です。
3.夫婦関係調整調停の手続き
夫婦関係調整調停の申し立て先は、相手の住所地の家庭裁判所か当事者間で合意した家庭裁判所です。
【関連ページ】裁判所の管轄区域
この調停では、同時に”財産分与請求調停”を申し立てることで、財産分与の話し合いを進めてくれます。
申し立てに必要なものは、下記の通りです。
夫婦関係調整調停申し立てに必要な物
- 収入印紙1200円分
- 郵便切手800円程度(裁判所により違います)
- 夫婦関係調整調停申立書1通コピーでも可(裁判所で入手するか裁判所ホームページからダウンロードできます)
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 資産・財産に関する書類(残高がわかる通帳のコピー・不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書など)※財産分与請求調停も申し立てた場合に必要
- 陳述書(事前に裁判官に、結婚したからの経緯・問題となっていること・自分の希望を伝えるための書類)
- 離婚の原因となった証拠となるもの(今回の場合、性格の不一致が証明できるもの)
※審理のために必要と判断された場合、追加書類の提出を求められることもあります。
【関連ページ】裁判所「夫婦関係調整調停」

“陳述書”の提出は任意ですが、提出することで調停の流れがスムーズになるので、提出をお勧めします。
陳述書について
家庭裁判所で夫婦関係調整調停を申し立てる際に、提出する書類の中に“陳述書”があります。
この書類は、夫婦が結婚してからの経緯・離婚の原因・現在の状況・自分の希望していること(離婚を望んでいる・子どもの親権をとりたい・養育費を毎月4万円希望しているなど)をまとめます。
家庭裁判所の調停の所要時間は、1回が2時間程度なのでその中で口頭説明するよりも、事前に裁判官に内容を知ってもらうことで、時間の短縮になります。
今回のまとめ
性格の不一致が理由での離婚に夫婦で合意できないときは、家庭裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てます。
この調停では、性格の不一致の証拠がないと不成立になる可能性が高いので、調停の前に証拠を用意する・1年以上の別居をしておくことをお勧めします。
調停の申し立て時には、陳述書の提出をしましょう。

夫婦関係調整調停の申し立て前に、性格の不一致ではなくモラスハラスメントではないか、第三者に確認することも重要です。