
養育費の支払いが滞った場合、履行勧告・履行命令・強制執行という手段で支払いの催促をします。
夫が会社員の場合は、給料を差し押さえることもあります。
目次
1.夫に直接連絡をしてみる
協議離婚をして、毎月の養育費の約束を夫が守ってくれないこともあります。
この場合、すぐに強制執行などをしないようにして下さい。
なぜなら、元夫の方に正当な理由があって振り込みができない可能性もあるからです。
まずは電話やメールで連絡
まずは、電話やメールで「今月分の振込みはどうなっていますか?」と伝えて、遅れている理由を聞きましょう。
もし第三者から履行勧告・履行命令などで支払いを促してしまうと、元夫が不快に思って今後の関係を悪化させてしまうこともあります。
よって、最初は柔らかく「何か事情があって養育費の支払いができないのか」の確認をとることをお勧めします。
例えば、やむを得ない下記のような理由も考えられます。
養育費振り込みが遅れた事情例
- 急な出張で海外に来ていて振込みが出来なかった
- 急な出費があって、手持ちのお金が無かったから来月に2ケ月分を入れるつもりだった
- 病気になり入院していて振り込めない又は振り込める収入がない

振り込まれなくても焦らず、まずは本人に確認しましょう。
元夫側に振り込めないやむを得ない事情があったのに、感情的になって「なんで振り込まないの!」などと言うと、その後の関係を悪化させてしまいます。
連絡しても何も解決できなかった場合は、次のご紹介する手段を取ります。
2.支払いを催促する、履行勧告・履行命令・強制執行とは?
もし元夫から返事や振り込みがされない事情なども無い場合、履行勧告・履行命令・強制執行を行う事が出来ます。
履行勧告とは?
“履行勧告”とは、調停離婚をした人が使える制度です。
養育側が家庭裁判所に、調停で決定した養育費が滞納についての履行勧告を申し立てをすると、支払い者である元夫に対して「決められた養育費を支払ってください」と注意をしてくれます。
【関連ページ】履行勧告手続等
履行命令とは?
“履行命令”も、調停離婚をした人が使用できる制度です。
履行命令の後でも、養育費の支払いをしなかった場合に適用されます。
そして、この命令が守られなかった場合は10万円以下の過料の制裁がされるので、支払いに応じる可能性も履行勧告よりは高くなります。

この10万円以下の過料は罰金なので、申立人に入るお金ではありません。
強制執行とは?
強制執行とは、”公正証書(執行承諾約款があるもの)”や調停離婚の判決・判調書がある場合に使用できる制度です。
強制執行には“直接強制”と“間接強制”があります。
【直接強制】
支払者の意思に関わらず財産や給料の差し押さえをすること。
【間接強制】
決められた養育費の支払いを実行するまでの間、裁判所債務者に対し間接強制金の支払いを課すことで心理的圧迫をかけ、間接的に養育費の支払いを促すこと。

直接強制は一方的に相手の財産を差し押さえるかなり強い手段です。
対して間接強制は、「養育費を払わないのなら罰金ですよ」と警告して、養育費を支払わせるようにするものです。
強制執行でできることは?
強制執行でできることは、下記の通りです。
強制執行の権限
- 動産(家財・家電・商品券・車両など)
- 不動産(土地・建物)
- 夫の給料の差し押さえ(この場合、夫の給料の2分の1まで)
- 預金口座の差し押さえ(金融機関名・支店名・口座番号の情報が必要)

この強制執行では、毎月の養育費分以外に、この先支払われる金額を一括で受け取ることも可能になります。
しかし、差し押さえる財産や収入がない場合は、申し立てが取下げられることになります。
強制執行するための手続きについて
給料・口座の差し押さえをする手続きは“債権差押命令”といいます。
この申し立て先は、相手の住所地のある地方裁判所です。
【関連ページ】裁判所の管轄区域
給料の差し押さえに必要なものは、下記の通りです。
給料の差し押さえに必要な物
- 債権差押命令申立書(A4板を縦にして横書き・左綴じで作成)
- 当事者目録・請求債権目録・差押債権目録の作成が必要)
- 執行力のある債務名義の正本(判決・和解書・公正証書に執行文の付与があるものなど)
- 債務名義の送達証明書
- 法人の資格証明書(最寄の法務局で入手ができます)
- 住民票の写し(債権者・債務者の現在の住所が債務名義が記載された書類と違う場合に必要になります。)※引っ越しをした場合
- 収入印紙4000円分
- 郵便切手3000円弱
※上記の他にも必要な書類がある場合は、追加で提出を求められる可能性もあります。
【関連ページ】債権差押命令の申立てをされる方へ
今回のまとめ
夫が養育費を滞納したときは、自分で理由を聞いてみましょう。
理由もなく支払い義務を無視する場合は、家庭裁判所の履行勧告や履行命令の申し立てをして下さい。
それでも、支払う気配がないときは、地方裁判所に強制執行の手続きをします。

強制執行まで考えると、大変な手続きになりますので、できるだけ弁護士に相談して進めましょう。