
夫の会社名義の財産であっても、財産分与の請求が可能なケースがもあります。
夫婦でともに築きあげた財産であると認められた場合、財産分与の対象になります。
目次
1.会社名義の財産は財産分与できるのか?
夫の会社名義の財産でも、妻の協力があった場合に財産分与ができます。
夫婦で一緒に会社を作り、妻が夫と同じだけ仕事をしている場合は会社名義の財産であっても、半分を請求することが可能です。
例えば、同じだけ会社に貢献していなくても、請求書や振込み手続き・清掃や接客などの手伝いをしていた場合も財産分与の対象となります。
しかし、全てのケースで夫と半分というわけでは無く、会社への貢献度によって割合は変わるのです。
2.法人名義のものは財産分与の対象になる?
基本的に法人名義のものは財産分与の対象となりません。
しかし、個人(夫)が法人へ不動産・金銭の貸付を行っている場合はその不動産・金銭は対象となります。
例えば、法人名義の車両を夫婦で自家用車として使用していた場合でも、車は法人名義なので財産分与の対象にはなりません。
しかし、夫名義の車を会社用として使用していた場合であれば、財産分与の対象となります。
3.会社名義の財産を請求場合、弁護士に相談すべき?
夫婦での話し合いの結果で、双方が合意できる場合は弁護士は必要ありません。
しかし、夫婦の話し合いが進まずに離婚して2年が経過してしまうと、財産分与の請求ができなくなるのです。
なぜなら、財産分与の請求は離婚した日から2年間と”時効”が決まっています。(財産分与請求調停を申立た場合は、解決するまで時効が延長されます)
よって、離婚前に財産分与の話し合いをしておくか、調停離婚を申立て財産分与も一緒に調停で進めていくことをお勧めします。

会社名義の財産があると、財産分与の話し合いがこじれるケースが多くなります。
弁護士を雇ったほうが建設的に話し合いが進みます。
4.調停離婚と財産分与請求調停について
離婚に双方が同意した場合でも、財産分与・慰謝料・養育費の話し合いが進まないケースがあります。
離婚だけを先にして、金銭的な話し合いをしていると財産分与請求の時効を知らないと、損をしていまう恐れがあります。
よって、双方が納得できない部分があるならば、最初から調停離婚にして財産分与を進めていく事もお勧めします。
調停離婚とは?
夫婦の話し合いで離婚をすることを、“協議離婚”といいます。
そして“調停離婚”とは、家庭裁判所に離婚の調停を申立て、裁判官と調停委員に間に入ってもらい離婚の話し合いを進めていくことです。
財産分与請求調停とは?
“財産分与請求調停”とは、財産分与の話し合いを家庭裁判所にて、裁判官・調停委員に間に入ってもらいお互いの妥協点を話し合って進めていく調停のことです。
この調停は、離婚調停と一緒に申立が可能です。よって、離婚調停をする方は一緒に申立をしておくことを、お勧めします。
5.離婚調停の申立の手続きはどうやる?
夫の住所地の家庭裁判所又は、夫婦が合意した家庭裁判所に調停の申立をします。
調停離婚(財産分与請求調停を含む)の申立に必要なものは、下記の通りです。
調停離婚に必要なもの
- 収入印紙1200円分
- 郵便切手800円程度(裁判所によって金額が違います)
- 夫婦関係調停申立書又は写し1通(家庭裁判所で入手するか、裁判所ホームページ(HP)からのダウンロードもできます)
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 資産・財産に関する書類(通帳のコピー・不動産登記事項証明証・固定資産評価証明証など)
- 陳述書(婚姻してから現在までの経緯のまとめ・夫婦や子どものプロフィール・離婚したいと思った原因・何を望んでいるのかなどを書きます)
離婚調停や財産分与をスムーズに進めるために、事前に“陳述書”を作成しておいて、裁判官に読んでもらうことで時間の節約になります。
調停の時間は約2時間しかありません。その場で考えながら状況を説明しようとすると、無駄に時間を使ってしまい、調停が進みにくくなります。

自分一人で離婚調停を行うと、もし相手が弁護士を雇っていた場合、財産分与面で不利になる可能性が高くなります。
できるだけ弁護士と一緒に相談をすすめながら調停を行うことが望ましいです。
陳述書について
調停の申立をする場合、”陳述書”が重要な役目を果たしてくれます。
裁判官に口頭で説明する時間の短縮や離婚・財産分与にてどのような条件・要望があるのかを明白に伝えることができるのです。
陳述書は、下記の内容をまとめます。
夫婦のプロフィール(氏名・年齢・職業・収入)
婚姻してから現在までの簡単な経緯(平成1年6月に結婚、平成4年3月に長男誕生、平成24年に夫の浮気で別居、復縁の話し合いをしたが解決せず、離婚に両者が同意し現在に至るなど)
陳述書に書く内容!
- 離婚を考えるきっかけになった原因について
- 子どものプロフィール(氏名・年齢・現在どちらと同居しているか)
- 子どもについての希望(監護権・親権が欲しいか・子どもを引き取る場合養育費の希望金額など)
- 夫婦の話し合いがどこまで進んでいるか(財産分与で車は夫に家具と美術品は妻が受け取る・子どもは妻が引き取るが親権はどちらも欲しいと思っているなど)
- 財産分与での希望(共有財産の半分と夫の会社名義の財産の3割※会社への貢献内容も記載)
離婚調停・財産分与請求調停を弁護士に依頼した場合
弁護士を雇った場合は、調停には弁護士に代わりに行ってもらうこともできます。
夫が弁護士を雇った場合は、自分で対処して損をしないように、自分でも弁護士をたてて交渉をしてもらいましょう。

夫婦で顔を合わせると感情的になり心中では相手の言い分に納得しているのに、意地の張り合いする可能性が高くなります。
第三者である弁護士が代わりに対処することで、事態の改善ができるのです。
今回のまとめ
夫の会社名義の財産でも、財産分与が受けられる可能性があります。
しかし、状況によっては半分より少ないケースもあります。
夫婦間では、財産分与の話し合いが決められない場合は、早急に弁護士に依頼したり離婚調停の申立の手続きをしましょう。

会社名義の財産分与請求は、個人では難しくなります。
だいたい50万円前後の費用はかかりますが、弁護士を雇う方が自分で辛い思いをすることが少なくなるでしょう。