
原則として、不貞行為・浮気をしている妻(夫)側からの離婚請求はできません。
ですが不貞行為の前に、婚姻関係が破綻していた場合や双方に原因がある場合は、離婚請求ができるケースもあります。
目次
1.不貞行為の前に婚姻関係が破綻していたか?
愛人との不貞行為の前に、婚姻関係が破綻していた証明できるものがあれば、離婚請求ができます。
なぜなら、婚姻関係が破綻(夫婦関係が成立っていない)状況での不貞行為(浮気)は、すでに破綻している関係に影響はないと解釈をされるからです。
婚姻関係が破綻していると認められるのは、下記のケースです
婚姻関係破綻が認められるケース
- 性格の不一致で別居期間が3年以上経ってからの不貞行為(浮気)だった
- 夫(妻)も不貞行為をしている
- 理由もなく家を追い出されて別居していた
- 理由もなく妻(夫)が実家から帰らない
- 長期間のセックスレス
- 妻が育児・家事の一切を放棄していた

不貞行為の前に別居していた場合、妻(夫)側が”同居義務違反“にあたる可能性があります。
2.同居義務違反とは?
同居義務違反とは、民法でめられた「夫婦は、同居して協力し合い・扶助をするものとする。」と決められた同居を拒否したり、自分勝手な理由で拒むことです。
夫(妻)側にも原因がある別居は同居義務違反になる?
同居義務違反を証明するためには、夫婦関係を回復しようと努力したのに、妻(夫)側の協力が無かった場合は証拠を集めておきます。
Aさん夫婦の例
夫婦関係の回復を図るために一時的な約束で別居をした。
月2回、子どもを交えた交流を持つ約束をしていた(書面に残してある)
しかし、妻(夫)が約束を守らず子どもにも面会させないまま3年が経過した。
Bさん夫婦の例
結婚して2年頃から、セックスレスになり妻(夫)から別居したいと申出があった。
生活費を仕送りしながら3年が経過したが、妻とのセックスレスも改善せず面会の回数も年に2回食事する程度。
Cさん夫婦の例
妻が出産を理由に、実家に帰り戻ってこない。
3ケ月経ったら戻ると約束していたが、1年以上戻らない。
話し合いをしたが、「1人で子育てする自身が無い、同居してくれないなら離婚する」と言われたが、仕事の都合で妻の実家から出勤するのは難しい。
離婚の話し合いをはじめていたが、その最中に好きな女性ができてしまった。

上記のようなケースは、妻(夫)側に”同居義務違反”があるため、これは“悪意の遺棄”にあたります。
悪意の遺棄をした側から離婚請求は出来ないばかりか、逆に愛人や悪意の遺棄をした側に慰謝料を請求される事もあります。
お互いが合意の上で別居している場合
ただし、お互いが合意の上での別居・夫婦関係の修復のために努力をしている場合は同居義務違反になりません。
しかし、別居期間が3年以上と長い場合は、婚姻関係が破綻していると認められるケースもあります。
3.妻(夫)側に離婚の意思がない場合はどうする?
妻(夫)側に離婚の意思が無く愛人と結婚したい場合は、”慰謝料“を提案するか、”夫婦関係調整調停(離婚調停)“を申し立てることになります。
なぜなら、良好な関係が築けていない夫婦間の話し合いで解決するのは、感情的になってしまい金銭面も含め、解決までが長引くケースが多く報告されているからです。
よって、夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立ての方が、第三者の裁判官・調停委員を交え冷静に話し合いが進められるためお勧めです。
妻(夫)に好条件で離婚を進言する
妻(夫)に離婚の意思がない場合、慰謝料・財産分与の金額を高設定にして「離婚してくれないか?」確認をするのも、ひとつの解決方法です。
しかし、一括で支払いができる金額なら問題ありませんが、分割での支払いは状況が変わったときにトラブルになる可能性があるので注意してください。
例えば、下記のケースです。
Aさんの場合(問題の無いケース)
妻に慰謝料として、1,000万円・不動産(ローン完成済)を譲りそれ以外の財産分与は半分として離婚を成立させた。
養育費も、子どもが20歳までの分を一括で支払った。
その後に愛人と再婚をした。
Bさんの場合(問題がでたケース)
妻に慰謝料として600万円(最初に200万円支払い・後は毎月5万円)・不動産(ローン完成済)を譲り財産分与は半分として離婚を成立させた。
養育費として毎月4万円を支払うことにした。
その後に愛人と再婚をした。
しかし、転職による収入が減り慰謝料・養育費の毎月の支払いが難しくなり、元妻に減額の要求を聞いてもらえず現在の妻にも働いてもらうことにした。
2人で頑張ったが、現在の妻が精神的に疲れてしまい「こんな生活するために結婚したんじゃない、離婚してください。」と離婚を請求された。

上記のように無理な和解金額を設定してしまうと、その後の生活に支障がでる可能性があるので注意しましょう。
4.夫婦関係調整調停(離婚調停)とは?
夫婦関係調整調停とは、家庭裁判所で裁判官・調停委員を交えて「夫婦関係の修復は不可能か?」「離婚するのに問題になっていること」についての助言や提案をもらい、話し合いを進めていく調停です。
この調停のメリットは、下記のようなことです。
夫婦関係調整調停(離婚調停)のメリット
- 法律に詳しい裁判官が慰謝料・養育費について適正な金額を提示してくれる
- 調停委員が当事者間に入り事情を聞いてくれるので、感情的な言い争いを避けられる
- 1回の調停時間が2時間なので、時間が作りやすい
- 子どもの前で言い争いをしなくてすむ
夫婦関係調整調停(離婚調停)の手続き
夫婦関係調整調停の申し立て先は、相手の住所地にある家庭裁判者か当事者間の合意した家庭裁判所です。
【関連ページ】裁判所の管轄区域
この調停は、財産分与請求調停の申し立てをしておくと、一緒に進めてくれるので同時の手続きをお勧めします。
申し立てに必要なものは、下記の通りです。
夫婦関係調整調停(離婚調停)申し立てに必要な物
- 収入印紙1200円分
- 郵便切手800円程度(裁判所により違います)
- 夫婦関係調整調停申立書1通またはコピーで可(裁判所で入手可・裁判所のホームページからダウンロードできます)
- 財産分与請求調停申立書1通またはコピーで可(裁判所で入手可・裁判所のホームページからダウンロードできます※財産分与請求調停を一緒に申し立てる場合に必要)
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 資産・財産に関する書類(残高が分かる通帳のコピー・不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書)※財産分与請求調停に必要
- 陳述書(裁判官に調停前に、自分達の結婚から現在までの経緯・離婚原因・自分が望んでいることを読んでもらうためのものです)
※審理のために必要と判断された場合、追加書類の提出を求められることもあります。
【関連ページ】裁判所「夫婦関係調整調停」
5.陳述書について
家庭裁判所に離婚調停を申し立てる際に提出する書類に、“陳述書”があります。
この陳述書の提出は、任意とされていますが調停前に裁判官に事情を理解してもらうために提出することを、お勧めします。
なぜなら、基本的に1回の調停の時間は2時間程度と短いため、陳述書を提出することで口頭で事情説明をする時間を短縮できるからです。

今回のまとめ
愛人と結婚するには現妻(夫)と離婚する必要がありますが、妻(夫)側に、悪意の遺棄や正当な理由がない場合に離婚請求はできません。
しかし、相手側に同居義務違反・セックスレスなどの原因がある場合は、離婚請求ができます。
話し合いで離婚に合意が取れないときは、家庭裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てましょう。

良い家庭環境だったのに、浮気から愛人との結婚へ進展した場合、慰謝料請求・財産分与請求の覚悟が必要になります。愛人へも慰謝料の請求をされることになるでしょう。